東日本大震災から9年ぶりの海開きを迎えた気仙沼市小泉地区を訪問してきたので報告します。
①小泉海水浴場の再開
7/20(土)、小泉海水浴場が被災後初めて再開しました。
被災前の小泉海水浴場は、白浜と松林が広がる美しい海岸で、毎年夏にはおよそ5万人が訪れるほど活気があったそうです。また、小泉海岸はサーフスポットとしても有名で、遠方から多くのサーファーが訪れたり、全国規模の大会が開催されたりもしたそうです。
そして今回、ようやく防潮堤の建設や砂浜の復旧工事に目処が立ったのを機に、被災後9年ぶりに海開きが行われました。
当日は地区内外の多くの人が訪れ、思い思いにのんびりとした時間を過ごしていました。
小泉海岸広場の様子(2019.07.20)
実は、小泉海水浴場の再開までには様々な経緯があります。
まず、津波の恐怖から今も海に近づくことが困難な被災者の方がいらっしゃいます。また、防潮堤建設の是非を巡り地区が分断してしまったこともメディアで大きく取り上げられました。あるいは、復旧工事の最中も工事現場の脇に臨時駐車場を設置し、多くの方が安全性確保のための海底調査を積極的に実施しながらサーフィンを楽しんでいたこともありました。
そういった複雑な経緯を乗り越えながらも、海水浴場に再び訪れのんびりと過ごしている人たちを目の当たりにすると、いま体験している風景やそこで流れている時間がなおさらゆったりとした、かけがえのないものに感じられました。
海水浴場で過ごす人々(2019.07.20)
②三陸自動車道の開通
2/16(土)、三陸自動車道の小泉海岸ICが開通しました(南三陸側の歌津IC〜小泉海岸ICの延長10km)。
集団移転地の脇を通り、津谷川をまたぎ、小泉地区の隣の登米沢地区へと接続する道路です。
三陸自動車道から小泉地区の集団移転地を望む(2019.07.20)
この小泉海岸ICの開通に伴い、仙台〜気仙沼間の高速バスのルートやバス停が変わりました。
これまで高速バスは三陸自動車道から国道への乗り換えを歌津ICで行っていたのですが、今後は小泉ICでの乗り換えとなります。高速バスに乗っていると、ちょうど小泉地区を通過するあたりの地点が視界のひらけるポイントになっており、小泉地区に肩入れしている僕としては興奮する移動の体験となりました。
三陸自動車道から海が広がる風景を見下ろす(2019.07.20)
また、新しいICの開通に伴い、国道の交通量が減っていたのが印象的でした。 小泉地区の地区間を結ぶ主要道路はこれまでは国道で、特に通勤の時間帯はいつも渋滞していました。今回、三陸自動車道が開通したことによりそちらに車が流れ、国道側の交通量が少なくなり、地域交通の快適性や安全性が大幅に向上したように思います。
③移転地の公園整備 復興期間である発災後10年が間近となったこともあり、移転地では公園の整備が行われました。 この公園は、移転参加者の減少に伴い当初宅地として設計されていたものを転用したものです。 今回の整備では、東屋と築山が追加されたことに加え、外周道路側のコーナーにフェンスが設けられ、宅地側には駐車のための砂利舗装が敷かれました。 決して大掛かりな整備ではなく、住民の方も遊具などがあれば良いのにという感想だったものの、個人的には大きな変化だったように感じました。具体的には、空間に行為のきっかけを与える要素が付加された点と、緑地帯と公園の空間が明確に分節された点です。
新たに整備された公園、築山では子どもが遊んでいる(2019.07.21)
これまでの緑地帯・公園のスペースは、行為を誘発するような空間要素が少なく、緑地帯・公園が一体となっていることも相まって、住民の方も広々とした空間をどう使ってよいかわからないと述べていました。そして実際に、そこで行われている活動も散歩や移動といった通過の行動がほとんどでした。
しかし、今回の整備によって、緑地帯・公園に新しい活動のバリエーションが生まれるように思います。滞在中も、築山に子どもが登り遊んでいる場面を目撃することができました。
また、この整備を契機として、地区の自治組織である振興会では、過去に寄附のあった桜の木をどこに植えるかという話し合いが具体的に始まりつつあるとも伺いました。
今後、移転地の整備がどのように進められ、そこでの使われ方や活動がどう変化していくかとても楽しみになりました。それらが少しでも良い方向に展開していくよう、今後も微力ながら見守っていきたいと思います。
D4 坪内
緑地帯の様子(2019.07.21)
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